【梅花春月】 劣等感
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梅花春月

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劣等感

幕末
土方視点 佐々土




どうにもならないことが憎かった。
生まれ持った運命だと、そんな論では納得ができず、どうにかしてそれを覆したいと願った。
百姓の子は武士にはなれないと、何度も何度も夢を語るたびに聞かされた。
幼い日に拙い夢を見ることさえ否定され続け、無理だと分かってはいてもそれをどうにか自らの手にしたくて、その為なら何でもすると思った。
事実、何だってやってきた。
故郷を出て、人を斬って、人に斬らせて、厳しい規則を作り、他者を律して己もろとも新撰組という組織に縛り付けた。
そこは、百姓に生まれた俺が武士となれる唯一の場所だった。



「どうした、声を堪える必要などない」
「ぅ、…く、っ」

溢れそうになる声を、喉奥を絞って堪えた。
口内に鉄の味が広がり、噛み締めていた唇が裂けたことを知る。
土方、と咎めるように佐々木が呼ぶのを、首を左右に振り無視をした。

座ったまま抱きしめ合うようにして交わるのを佐々木は好む。
はじめてそうしたいと告げられたときは冗談じゃないと思ったが、何度もそうさせろと迫る佐々木に、どちらにせよ己の体に奴の熱を埋め込むことには変わらないのだと諦めた。
体を大きく揺さ振られ、腹の奥で佐々木の熱が蠢く。
呼吸をするのと同時に堪え切れない喘ぎが漏れるのを誤魔化すように、顔を佐々木の肩に埋めて何も纏わない背中に爪を立てた。
佐々木の背に残る幾本もの引っ掻き傷は、その全てが俺のつけたもの。
遠慮の欠片もなく抉るように爪を立てるせいで時折皮膚が裂けて血さえ流れているというのに、奴は寧ろ俺が爪を立ててからの方が興奮していた。
だが別に被虐趣味というわけではないだろう、単に俺に付けられる傷に熱を上げているだけのこと。
ご執心なことだ、と何処か他人事に思いながら気取られぬように嘲笑した。



新撰組の名を賜ってすぐの頃、近藤さんではなく俺と二人きりで話がしたいと持ち掛けられた時から、きっとこういうことだと分かっていた。
分かってはいたが、佐々木には清川と袂を分かち京都残留を決めた折に京都守護職配下へと取り計らってもらった恩がある。
新撰組と己の身を天秤にかけて拒否をするなど、できるはずもなかった。
それ以来、時折呼び出されては体を重ねている。


「あ、は…ぁ、くっ」
「…土方、っ」

名を呼ばれ、一際激しく奥を突かれた。
背にしがみつき衝撃を受け止めると、腹の奥へ暑い熱が飛散する。
少し遅れて俺も身を震わせながら互いの腹に白濁を散らすのを、佐々木は焦がれるようにして見ていた。

無意識に、口角が上がる。
俺が佐々木に抱かれるのは、新撰組副長として佐々木に恩があるからだ。
恩があるからだが、それだけではない。
この男は生まれながらの武士だ、武家に生まれ、武士として育った。
そんな男が俺なんぞに執着し、欲を抱き、何度となく求める様が可笑しくて、武士などと言っても結局はこんなものだと嘲笑うために。


「佐、々木…っ、も…う、ぁ…」
「…まだだ土方、夜が明けるまで、まだ」

今夜、と誘われる時、夜が明けるよりも前に解放してもらえたことなど今までに一度もない。
いつも、時を惜しむように佐々木は俺の体を離そうとはしないのだ。
先ほど吐き出したばかりの欲が体を動かす度ぐちぐちと音を立て、佐々木はより深く奥へと交わろうとする。
それに応えるように佐々木の全てを取り込もうとする自身の体に、俺は泣きたい気持ちで自嘲した。
俺の体は、奴の種を欲している。
俺が気持ちでどう抗おうとも体は本能のままに貪っていく。

知っていた、俺が佐々木に抱かれる理由など、幾つもの言い訳を取っ払ってしまえば唯一つ。
俺は今も、生まれながらの武士という自分ではどう足掻いてもなることの出来ないものに、焦がれて続けている。



end



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Date:2016/01/31
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