【梅花春月】 あなたが一番
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梅花春月

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あなたが一番

明治
伊藤視点 大木戸






その人は、夜を照らす月の光のような人だった。
闇夜に憂う姿が美しく、かと思うと誇らしげに夜を照らし、そして時に闇に姿を眩ませてしまう。
美しく地上を照らす月はとても心惹かれるものであるはずなのに、一分の隙もなく完璧なまでに艶麗過ぎるそれに対し人は時に畏怖を感じた。

その人は、全てを呑み込む闇夜のような人だった。
暴力的なまでの静けさと、世界を丸ごと包むような雄大さを持ち、そして時に月光の陰となり空に揺蕩う。
何者も見えないほどの深い闇夜は恐怖と不安を煽るものであるはずなのに、後ろ暗さも全て搔き消してしまいそうなそれに対し人は時に安堵を覚えた。


木戸孝允という男は、淡い月の光に似ていた。
彼の口から語り出される未来は、国は、法は、全てが美しい輝きに満ちた誰もが望むような理想郷だ。
それ故に人は皆彼を慕い彼の思想を愛し、そうしながらも美しすぎるその理想が現実味を帯びることを否定する。

大久保利通という男は、暗い闇夜に似ていた。
彼の口から紡ぎ出される未来は、国は、法は、全てが何処までも現実的な夢の見ようもない独裁の世界だ。
それ故に人は皆彼を疎み彼の思想を嫌悪し、そうしながらも目に見える益と意義に安堵し実現させようとする。

彼らは正反対であり、同時に彼らは互いが必要不可欠な存在であった。

月は闇夜の中でこそ一等輝く。
無数の星を引き連れて、悠然と微笑む姿に魅了される。
闇夜は月があってこそ見上げられる。
黒洞々たるそこに散りばめられた光を求めて人々は天を仰ぐ。
月は、太陽の元では輝けない。
闇夜は、陽の光の元には存在しない。
月に必要なものは闇夜であり、闇夜には月こそ必要なのだ。

貴方が一番よく知っているでしょう、その男がどんな手を使ってでも貴方を手放さないことを。
貴方が一番よく知っているでしょう、どんなに拒絶をしていても最後にあの人は離れないことを。

僕は気付いたんだ、どうして今の世に貴方たち2人が存在したのかを。
互いに夜明けを待つ身同士、一等輝ける時代に生まれ落ちたのだ。
そうして互いを見つけた後に、この上なく輝きながら存在を示して、それからきっとこの後は、夜明けと共に去って逝く。
日が昇って人々が往来を堂々と歩けるようになった頃には、懐かしまれて、忘れられて、それでもその始まりにして終わりの瞬間を、ただ願いながら。


彼らは正反対であり、同時に彼らは互いが必要不可欠な存在であった。
彼らは互いだけを求めながら、互いだけを拒絶し、そして互いだけを自らと同等のものだと認識していた。
誰も彼らのどちらにも成り得はせず、誰も彼らのどちらとも等しくはなれなかった。
そんな彼らを覆い尽くし、新たな朝となれるものなど、たった一つしかない。
そんな彼らが自らの身を焦がし尽くしてでも新たな朝となることを願うものなど、たった一つしかない。
彼らの生んだ、彼らの子ども。
日本という、彼らを生みながらにして彼らから生まれた、古くも新しい我らの国。

彼は、憂う顔で優美に微笑み、時折闇夜にその姿を隠されながら人々を照らしている。
彼は、凍てつくような無表情で、時折月光にその姿を霞ませながら人々を覆っている。
僕は彼らを一番近くで見ていた。
そうしてもっと永く見ていたいと思いながら、知っていることがあった。

もうじき、長かった夜が明ける。


end

(僕は月の光に照らされながら闇夜の中に浮かんでいる、無数の星の一つに過ぎない)



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Date:2017/08/29
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