【梅花春月】 表裏一体
 

梅花春月

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表裏一体

幕末
龍馬視点 龍武→←以






なあ武市さん、声をかけると、言葉の代わりに視線だけが返ってくる。
右手の指を絡め、繋がっているもので奥を突く。
声にならない声をあげながら反らせた喉が眼前に晒され、そこへ喰らいつきたいという衝動をどうにか呑み下す。

「どぉいて、アシは良うてあいつは駄目ながじゃ」

努めて普段通りに、のらりくらりとした言い方で問う。
龍馬、と名を呼ぶ声は普段の凜とした声とはかけ離れ、低く掠れたそれは背徳感を煽る。

「あればぁおんしを好いちゅう者も、おらんろう」
「…龍馬」
「おんしゃ人に好かれるけんど、まっことおんしだけを好いちゅうは…、っ!」

グッ、と息を呑む。
急な締め付けに気を遣りそうになり、ぎゅうと目口を閉じ、腹に力を込めてなんとか堪えた。
幾分落ち着きを取り戻してからそろりと目を開けると、武市が濡れた眼光で睨んでいる。

「…こがな時に他の男の話は野暮やったねや」

すまん、と汗ばんだ額に唇を落とす。
一度腰を引き、再び腹の奥深くを突き侵す。
武市の好い場所を何度となく突きながら揺さぶっていると、霰もない声が漏れぬようにと口元を手で覆いながら頭を振る。
綺麗に結われていた髷が崩れ、綻んだ髪が汗の滲んだ額へ貼りつく。
普段の隙の無さや清廉潔白さは消え去って、乱れた様に口元で笑う。

「あぁ、確かんこりゃあ、見せられんねあ」

先生先生と慕ってくる以蔵に、こう乱れた姿を見せられるほど武市は自尊心が低くない。
幼馴染に慰まれ、剰え快感を甘受する、武市の生きようとする清く正しい道とはまるで反対の、淫靡な姿。
武市を神のように崇める以蔵も、武市の最愛の人である富子も、誰もこんな姿は知らない。
思うと、腹の奥底で溶岩のようにどろどろとした熱が生まれる。

「声を、聞かしとおせ」
「は…っ、嫌、じゃ」
「そう意地を張らんと。アシので此処を突いたら…」

のぉ、と子供のような笑みを浮かべ、武市の脚を掴み体勢を変える。
横臥位にして片足を腹につくまで曲げ、ぴたりと体をくっ付けた。
武市が慌てた様子で何事か言おうとするのを待たず、激しく腰を打ち付ける。

「あんっ…ぁ、あぁっあ、は…あっぁ」
「はっ、もう、抑えきれんろう」

常の体勢では届かない深いところを何度も突き上げると、わずかに残っていた理性さえ溶けていく。
最早抑える術もなくなった声は甘さを持って響き、涙の膜が張り潤んだ瞳が此方を見つめる。
口端から溢れた唾液を指で掬いあげて口元に触れると、躊躇うことなく熱い口内へ受け入れた。

「ん…ぅりょ、ふぅ…あ、りょう…っ」
「ああ、もう、アシもいかん…っ」

武市の口から指を引き抜き、代わりに自分の唇を重ねる。
ぐっと腰を抱き寄せ、そのまま白濁の欲を武市の腹の奥へと吐き出した。


どろり、白い体液が互いの体を汚す。
起き上がるのも億劫なほどの疲労感にぼんやりと眠気を誘われながら、アギ、と武市を呼んだ。
ほんの僅かな間、腕の中で胸に頭を寄せていた武市は、一度ゆっくり息を吐くといつもの引き締まった顔に戻り体を離した。

ごろりと寝っ転がっている自分を無視して武市は部屋を出て行く。
やがて戻ってきた時には身を清めさっぱりとした姿で普段通りきちりと着物を身に付けていた。

「泊まっていきゆうかよ?」
「そのつもりで来ちゅう。富子さんも今日はおらんち聞いとったしのぉ」
「…そうかえ」

富子が三日ほど向こうの家に戻る、と武市が言ってきたのは、こういうことを言外に含んでいたからだと思っていた。
事実こうして身を重ねている。
けれどもそういったことは相変わらず一言も口にせず、早く水を浴びてこいとだけ言った。


「さっきも言うたけんど、武市さん。以蔵には、どういてこういうことをしてあげんのですろう」
「…その話は終わったんじゃなかったがか」
「勝手に終わらせんといてください。あいつは、武市さんのこと…」

言い終える前に、言葉は途切れた。
唇を、塞がれたからだ。

「…初めてじゃ」
「龍馬?」
「武市さんから口吸いをしてきたがは、初めてですろう。そうまでして、この話はしとうなかがですか」

真摯な眼差しで見つめていると、武市は口を噤み、沈黙した。
どれほど時間が経ったか、互いに一歩も譲らぬまま外で虫の鳴く声だけが響く。漸く沈黙を破ったのは、武市の諦めたような嘆息だった。

「以蔵は、可愛い。確かに、あれはわしのことだけを考えてくれゆう」
「ほいたら、してやったらえいですろう。あれは武市さんとやったら、抱くも抱かれるも気にする男やないき、武市さんのえい方でしてやったら…」
「可愛いけんど。けんど…同時に、わしにはあれが怖いと思う時があるがじゃ」

先生のためならなんでもする、そう言いながら寄ってくる以蔵への愛おしさと、本当に何でも…人の道に外れた事をも武市のためと言いながら簡単にしでかしそうな以蔵への恐怖がある。
武市は、そういうようなことを言った。
分からなくはない。
自分も仲の良い幼馴染でありながら、武市をあだ名で呼ぶときやこうした夜を何となく感じさせるとき、射殺されそうな視線が飛んでくる。
それは紛れもなく、狂気に満ちていた。


「けんど…あれを人の道に生かすも、道を外させるも、武市さん次第ですろう」
「…分かっちゅう。分かっとるき、簡単に受け入れられんちや」
「…そうかえ。ほんだら、もうええき。武市さんがちゃんと以蔵のことも考えとるゆうがが分かったき、もうええ」

これ以上この話を続けたくはないと、自ら話を始めたにも関わらず身勝手にそう思った。
一緒に寝よう、と腕を広げる。
胸へ飛び込んでくるようなことはなかったが、それでも武市はちらと此方を見ていた。


以蔵が羨望と憎悪の眼差しを向けてくるとき、可哀想にと思う。
同時に、普段見せない武市の全てを、いつまでも自分のものだけにしてしまいたいとも思う。
武市が以蔵を呼ぶとき、以蔵の嬉しそうな顔を見て良かったなと安堵する。
同時に、誰より傍にいながら武市の思想の十分の一も理解できていないくせにと呆れたようにも思う。
以蔵が自分に笑いかけているときには、純粋に愛しい友だと思うのに、そしてきっと向こうもそう思っているはずなのに。

相反する想いを抱かせて苦しめるのは、自分だけ何処までも潔白であろうとし過ぎるこの男のせいだ、と抱き寄せる体をどろりとした気持ちで包み込んだ。


end





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Date:2016/04/18
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