【梅花春月】 おっとり
 

梅花春月

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おっとり

幕末
土方視点 南土





誰に対しても当たりが柔らかく、穏やかで人好きのする人である、と、以前隊士達が口々に評していたのを耳にした。
常に柔和で優しく微笑んでいる、と言っていたのを思い出し、喉の奥で笑う。

「何か、面白いことでも?」
「…いや、何でもね、っ…ぇ」

言い切る前に深く奥を突かれ、四肢が大きく跳ねた。
繋げた体が乱暴に揺すられ、何も身に纏わない背中が畳に擦れて痛んだ。
口からは、掠れた声が引っ切り無しに漏れてゆく。

「何を、考えてる?」
「は…っ、なんでも、あ、ねぇ」
「こんな時に、何を」

汗ばむ頬に張り付いた髪を乱暴に掻き揚げられる。
平生穏やかに笑んでいる瞳が鈍く光り、怒りを宿して射殺さんと俺を突き刺す様が好きで、情を交える度にそれを見たいと思う。
今にも人を殺しそうな、そんな目がこの男にもできるのだと、その目に見られてはいつも安堵した。

「あっ…は、ん、あんたの、は…ぁっ事、に…ん、決ま、ってんだろ」
「君が、私の事を?」

ふふ、と可笑しそうに山南は笑う。
覆い被さったまま腰の動きを止め、大きな両手を俺の首に這わし、ゆるゆると締め付ける。

「君が、私の何を考えると言うんだい?」
「か…っは、」
「私の意を聞かず、私を邪魔にする、君が」

嗚呼、と悦が湧く。
穏やかな仮面で隠して、その実渦巻く不満を持て余している。
それが俺のせいである事にも、俺にしかその姿を見せない事にも、最早興奮しか起こらない。

「私は君を悪くは思わない。君がそれを新撰組の為だと判断したのなら、君が新撰組に尽くす道をそれと思っているなら、決して」
「は、ぁっ…ぁ、ぁ、ぐ」
「君の志す新撰組が、君個人の為に造られるのではない新撰組の姿が、既に君の中で確立しているのなら、私はそれを否定しない」

ぎりぎりと、首を絞める手に力が込められてゆく。
酸素が足りず苦しさにぼうっとする頭は、けれども力を込める度に繋げた部分が僅かに動くのを感じて快感を拾い、目の前が白けながら火花を散らす。
山南の言葉は、もう半分も頭に入っていない。

「だから今後の新撰組に、君が私を不要と判断しても、私は君を恨まない。蔑みもしない。新撰組のために、受け止める、その覚悟はとっくに出来ている」

だけどね、と山南は指の力を抜いた。
解放された瞬間、肺が失った酸素を取り込もうと大きく息を吸い、急速なそれに噎せ返る。
身を捩って咳を繰り返し、生理的な涙が溢れるのを眺めていた山南は、息を吸いすぎて今度は過呼吸になりそうな俺の口元を手のひらで覆った。

「君が、私の手で苦しめばいいとも思う。せめて、私が君に苦しめられるのと同じだけは」

だからこうして体を重ねても、乱暴にしようとしか思わない、と山南は言う。
だから自分に苦しめられるべきその時に、自分以外の他の事など何一つ考える余裕など与えたくはない、と。

息を整え終わるのを待たず、山南は律動を再開した。
首を絞められて尚天を仰ぐ俺のそれには一切手を触れず、腹の奥を何度も貫かれる。
甘やかな愛撫がなくとも、男の象徴に触れられずとも、容赦なく打ち付けられる熱だけで悦を感じる俺は随分なものだと自嘲した。
それと同時に、俺を苦しめようとして自らをも余計に苦しめていく山南に、こうして体を重ねれば重ねるほど俺から離れられなくなっていくと愉悦を覚える。
俺たちは、何者にも切り離せない、こんな腐りきった関係であっても。
そのことが、俺の悦だ。

射殺すように俺を睨み、斬りつけるように体を貫き、鋭利な言葉で心の臓を突き刺してくる。
おっとりとした優しい男だなんて、この男の本質を何一つ分かっていない、と。
山南敬助という男を知る愉悦に浸りながら、逃れようのない悦の渦に呑まれていった。


end


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Date:2016/02/06
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